キオクシア株は買うべきか?「高すぎる」と書いた1週間後に44%上がって、私が外したこと【2026年8月】

こんにちは。アランです。

※本記事は投資判断の参考情報として作成したものです。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。

先に結論(2026年8月6日時点)

私は買いません。ただし、その理由は7月にこの記事を書いたときとは変わりました。

7月の私は「株価が高すぎるから」と書きました。そしてその1週間後、株価は38,380円から55,430円へ44%上がりました。値段の高い・安いを当てにいった私の判断は、単純に外れています。

それでも買わないのは、この銘柄の上下を自分が説明できないからです。説明できないものを100株554万円分持てば、下げたときに何を根拠に持ち続けるのかが決められません。以下、7月に書いたリスク7つを最新の数字に直したうえで、私が何を外したのかを正直に書きます。

2024年12月に東証プライム市場へ上場したキオクシアホールディングス(銘柄コード:285A)。生成AI需要の爆発的な拡大を背景に、上場からわずか1年半で株価は年初来最大660%を超える急騰を記録し、時価総額は国内トップ3に迫るほどの存在感を放っています。

「乗り遅れたくない」「今が買い時なのでは?」という気持ちになるのは当然です。私自身も半導体株のダイナミックな動きからは目を離せません。

ただ、この「乗り遅れたくない」で私は一度大きく損をしています。SNSやラジオのコメンテーターが勧めていた銘柄を、中身を調べずに1株75円で買い、26円で売りました(▲65%)。急騰しているものを見て「今買わないと」と思ったときの自分の判断は、あとから見ると根拠が何もありませんでした。だから今回は、あえて反対側から書きます。

そこでこの記事では「キオクシアを今すぐ買わないほうがいい理由」を7つ挙げました。ただし、公開後にその見立ての一部が外れています。外れた部分を消して書き直すのは簡単ですが、それでは同じ判断ミスをする人の役に立ちません。7つの理由は残したまま、数字を2026年8月時点へ更新し、私が何を外したのかを追記する形にしてあります。


📌 キオクシアとはどんな会社か?まず基本を押さえよう

キオクシアは、もともと東芝のメモリ事業を分社化した企業です。NAND型フラッシュメモリの世界シェア約20%を持つ世界第2位のNAND専業メーカーで、スマートフォン・PC・USBメモリから、近年急拡大しているAIサーバー・データセンター向けエンタープライズSSD(eSSD)まで幅広い製品を手がけています。

2026年5月発表の2026年3月期決算では、売上収益2兆3,376億円(前期比37.0%増)、営業利益8,704億円(前期比92.7%増)と圧巻の数字を叩き出しました。続く2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)見通しも売上高+74.5%、営業利益+117%という、ほとんどソフトウェア企業並みの利益率が見込まれています。

業績だけ見れば「買わない理由がない」とすら思える銘柄です。しかしここに、多くの個人投資家が陥りがちな罠があります。


🔴 「高すぎる」と書いた1週間後に、株価は44%上がった

この記事を最初に書いたとき、私は株価38,380円(2026年7月29日終値)を見て「AIへの期待を先食いしすぎている」と判断しました。当時この記事には、6月の高値から約41%下げたことを指して「私が指摘したリスクが顕在化した」という趣旨の追記まで入れていました。

その2日後、2026年7月31日にキオクシアは2027年3月期第1四半期の決算を発表します。

  • 売上収益 1兆7,671億円(前年同期比 +415.5%)
  • 営業利益 1兆2,700億円(前年同期比 +2,728.6%
  • Non-GAAP営業利益 1兆3,262億円(同社の過去最高を更新)
  • 親会社帰属四半期利益 8,422億円

前年同期比で営業利益が28倍。四半期だけで、前期の通期営業利益(8,704億円)を大きく上回りました。株価は決算を挟んで上昇し、2026年8月5日終値は55,430円(前日比+6.41%)。7月29日から44%の上昇です。

私の「高すぎる」は外れました。

何を外したのか

外した理由ははっきりしています。私はPERとPBRという「株価がいくらか」の指標だけを見て、その分母である利益そのものが数十倍になる可能性を計算に入れていませんでした。PER55倍は、利益が変わらなければ確かに割高です。しかし利益が28倍になれば、同じ株価でもPERは一瞬で1桁になります。

つまり私が使っていたのは「利益が今のままなら」という前提つきのものさしで、その前提こそが崩れる局面だったということです。急成長銘柄に対して割高・割安を語ること自体が、そもそも難しい。

それでも私が買わない理由

では買えばよかったのか、というと、私はそうは思っていません。

私にはSNSやラジオで勧められた低位株を中身も調べずに買い1株75円が26円になるまで持って▲65%で損切りした経験があります。あのときの私は「上がっている」以外に買う理由を持っていませんでした。だからこそ今回も慎重に書きました。

今回わかったのは、その慎重さも同じくらい根拠が薄かったということです。「上がっているから買う」も「高そうだから買わない」も、どちらも株価の数字だけを見ている点では同じでした。片方が損を生み、もう片方が機会損失を生んだだけです。

私が買わないのは、値段が高いからではありません。NAND価格の需給も、AIサーバー向け需要が何年続くのかも、私には説明できないからです。説明できないものを100株=約554万円分持てば、株価が半分になったときに持ち続ける根拠も、売る根拠も自分の中にありません。JFEを含み損で持ち続けているのは、少なくとも「なぜ買ったか」を自分で説明できるからです。

この見立てもまた外れるかもしれません。実際、みんかぶに集計されているアナリストの平均目標株価は112,994円(2026年8月6日時点、強気買い9人・買い6人・売り1人)で、現在の株価の2倍以上です。私の判断が正しいという保証はどこにもありません。ただ、外れたときに理由を説明できる買い方をしたいというのが、▲65%を経験した私の結論です。


⚠️ 理由① 株価はすでに「夢の値段」を織り込んでいる

2026年8月5日終値でのキオクシアの株価は55,430円(前日比+6.41%)。7月29日の38,380円から44%上昇しました。6月12日には時価総額が44.3兆円に達してトヨタ自動車を抜き、国内首位に立った場面もあります(同日終値83,140円)。そこからは3割ほど下げた水準ですが、上場からの値上がり幅を考えれば依然として「将来の成長への強い期待」が織り込まれた株価です。

PER(株価収益率)とは、株価が1株あたり利益の何倍で買われているかを示す指標です。一般的に日本の製造業では15〜20倍程度が目安とされます。ただしキオクシアの場合、7月31日の決算で四半期利益が前年同期比で28倍に動いたため、実績PERは指標として当てになりません。6月時点で77倍、7月下旬でも約55倍だった数字は、いま計算し直せばまったく別の値になります。私が7月に「割高だ」と判断したのは、まさにこの点を見落としていたからです。

2027年の業績予想ベースの予想PERは約8〜9倍まで下がるという試算もあります。しかしこれは「今後も高成長が続く」という前提があってこそ成立する数字です。少しでも業績の伸びが鈍化すれば、バリュエーション調整(株価の大幅下落)が起きる可能性が高くなります。

現在の株価は「AIへの過剰期待」であり、実力値(バリュエーション)まで30〜40%の調整が入ると予測する専門家もいます。

今の株価で買うということは、「今後も高成長が続く」というシナリオにフルベットすることを意味します。


⚠️ 理由② 半導体には「シリコンサイクル」という宿命がある

株式投資において最も注意が必要なのが、業種固有のリスクを見落とすことです。キオクシアが属するNAND型フラッシュメモリ市場には、「シリコンサイクル」と呼ばれる3〜4年周期の好不況サイクルが存在します。

仕組みはシンプルです。需要が増える → 各社が増産投資 → 供給が需要を上回る → 価格が暴落 → 業績が悪化 → 増産投資が止まる → 再び需要が逼迫……という繰り返しです。

実際にキオクシアは過去のNAND不況期に大幅な赤字を経験しています。2022〜2023年の不況期には、需要の急減と在庫調整が重なり、業界全体で未曾有の損失が出ました。現在はAI特需による「スーパーサイクル」と言われていますが、2026年後半以降には供給過剰に転じるリスクが複数の市場関係者から指摘されています。

「今が絶好調だから大丈夫」というのは、シリコンサイクルの過去を無視した楽観論です。


⚠️ 理由③ サムスン・SKハイニックスの増産が最大のリスク

キオクシアの最大のライバルは韓国の2社です。

  • サムスン電子:NAND世界シェア約30%の首位。圧倒的な資金力と研究開発力を持ち、現在もAI向けNAND増産に積極投資中。
  • SKハイニックス:HBM(高帯域幅メモリ)でエヌビディアに独占供給しており、AI半導体分野では最もホットなポジションを確立。

2社がAI向け供給を本格強化すれば、今年後半から来年にかけて供給過剰に転じ、NAND価格が急落するシナリオが現実味を帯びます。NAND価格が下がれば、キオクシアの売上・利益は直撃を受けます。NAND専業ゆえに逃げ場がないのが、キオクシアの構造的な弱点でもあります。

対照的に、SKハイニックスはDRAMとHBMという「別の稼ぎ柱」を持っています。キオクシアはNAND一本足打法であり、市況悪化時の業績へのダメージが競合他社より大きくなりやすい点は見逃せません。


⚠️ 理由④ HBM・DRAMがない「構造的弱点」

現在のAI半導体市場で最も高い評価を受けているのは、実はNANDではなくHBM(High Bandwidth Memory)です。エヌビディアのAI用GPU(H100、B200など)の性能を最大限引き出すためには、HBMが不可欠であり、その供給を独占的に担っているのがSKハイニックスです。

キオクシアはHBMもDRAMも手がけていない純粋なNAND専業メーカーです。AI半導体のもう一つの主役に参加できていないという点で、「AI株」として見た場合に訴求力が限定的という側面があります。

もちろんAIサーバーにはNANDも大量に必要です。しかし投資家の期待値という観点では、「HBMのSKハイニックス」と「NANDのキオクシア」では市場での評価が異なり、それが現在の高バリュエーションへの疑問符につながっています。


⚠️ 理由⑤ 100株で約554万円、投資金額のハードルが高すぎる

実際に株を購入するうえで、見逃されがちな現実的な問題があります。

キオクシアの最低売買単位は100株。2026年8月5日終値55,430円だと、最低投資金額は約554万円です。7月時点の約384万円からさらに重くなりました。これは多くの個人投資家にとって、ポートフォリオの一銘柄に集中させるには大きすぎる金額です。

1株単位で買える「ミニ株(単元未満株)」を使えば少額から投資できますが、それでも1株55,430円という水準は手軽とは言えません。また、NISA成長投資枠を使うことはできますが、年間240万円の枠に対して100株購入は明らかにオーバーします。

投資の鉄則は分散です。1銘柄に数百万円を集中させることのリスクは、株価が急落した際に資産への打撃が甚大になることを意味します。


⚠️ 理由⑥ 無配続き、株主還元が見えない

2026年3月期も配当はゼロ、2年連続の無配です。来期(2027年3月期)の配当予想も現時点では未定とされています。

もちろん成長企業が利益を設備投資に回すこと自体は合理的な判断です。実際キオクシアは2029年までにNAND生産能力を2倍にする計画を持っており、巨額の設備投資が必要な局面にあります。

しかし「配当がもらえる安心感」を重視する投資スタイルや、インカムゲインを狙っている投資家にはまったく向きません。キャピタルゲイン(値上がり益)のみを狙う銘柄であることを、あらかじめ理解しておく必要があります。

株主還元の転換姿勢は示されており、今期はシニアローン4,000億円の早期完済が予定されているなど財務改善が進んでいるのは事実です。ただしそれが実際に配当という形で実現するまでには、まだ時間がかかる見通しです。


⚠️ 理由⑦ 地政学リスクと米中貿易摩擦

半導体産業は現在、地政学リスクの影響を最も受けやすい業界の一つです。米中の貿易摩擦と輸出規制は激化の一途をたどっており、日本の半導体メーカーも例外ではありません。

中国市場への輸出が制限されれば、販売先が失われます。製造に必要な素材・装置の調達ルートが断たれれば、生産コストが上昇します。こうした政治的不確実性は数値で予測できないため、投資リスクとして定量化が難しい厄介な要素です。

また米国が日本のNAND輸出に何らかの規制や条件を加える可能性もゼロではなく、キオクシアのような純粋な半導体メーカーはつねに政策リスクにさらされています。


📊 現状をデータで整理する

指標 数値(2026年8月5日終値時点) コメント
株価 55,430円 前日比+3,340円(+6.41%)。7/29の38,380円から+44.4%
上場来高値からの位置 約▲33% 6/12終値83,140円から見ればまだ大幅安
1Q営業利益 1兆2,700億円 前年同期比+2,728.6%。四半期で前期通期(8,704億円)を超えた
PER 実質的に評価不能 利益が28倍に動いた直後で、実績PERも予想PERも前提次第で数倍変わる
最低投資金額 約554万円(100株) 7月時点の384万円からさらに重くなった
配当 無配(2年連続) 2027年3月期も現時点で未定
NANDシェア 世界2位(約20%) NAND専業・HBM/DRAMなし(この構造は変わっていない)

更新履歴(2026年8月6日)

この記事は当初、株価38,380円(2026年7月29日終値)を前提に書いていました。7月31日の決算発表を受けて株価は55,430円(8月5日終値)まで44%上昇しており、当時の「割高だから買わない」という見立ては外れています。数値を8月時点へ更新し、外れた理由を上の章に追記しました。過去の記述を削除せず残しているのは、判断の記録としてそのほうが役に立つと考えるためです。


🔍 「それでも買いたい」人へ:投資するなら注目すべき指標

ここまでリスクを書いてきましたが、キオクシアが将来的に魅力的な銘柄である可能性を否定するつもりはありません。現在の業績は本物であり、AI・データセンター向けNAND需要の構造的な成長というテーマは長期的に有効です。

もし投資を検討するなら、以下の指標を継続的にウォッチすることをすすめます。

  • NAND価格指標(DRAMeXchange等):スポット価格・契約価格の月次推移で需給を先読み
  • SanDiskの四半期決算:キオクシアと合弁関係にあるWestern Digital傘下のSanDiskの数字がキオクシア業績の先行指標になる
  • 米国半導体株(エヌビディア・マイクロン)の動向:キオクシア株と高い連動性がある
  • サムスン・SKハイニックスの増産計画発表:増産が具体化すればNAND価格下落のシグナル

一括投資ではなく打診買い(少額から分散して少しずつ買う)、そして他銘柄との分散投資が現実的なアプローチです。


💬 まとめ:「業績が良い」と「今が買いどき」は別の話

キオクシアは間違いなく、現在の日本株市場で最もホットな銘柄の一つです。業績は本物で、AIインフラというテーマも強力です。

ただし、株式投資においては常に「何を、いくらで買うか」が重要です。どんなに優れた企業でも、高すぎる株価で買えば損をするリスクがある。これは投資の基本であり、キオクシアも例外ではありません。

今の株価水準は:

  • 利益の急変でPERが指標として機能しにくい状態(6月時点77倍→7月下旬約55倍→決算後は算定の前提しだい)
  • シリコンサイクルによる反転リスク
  • 競合他社の増産による価格下落リスク
  • HBM不在という構造的な弱点
  • 554万円という高い最低投資額

以上のリスクを十分に理解したうえで、それでも「長期的な成長に賭けたい」と思えるなら投資を検討する価値はあります。ただし「みんなが買っているから」「急騰しているから乗り遅れたくない」という理由での購入は、今の水準では特に危険です。

そして、この記事自体がその証拠でもあります。私は7月に「高すぎる」と書き、その1週間後に44%の上昇を見送りました。株価の数字だけを見て買う・買わないを決めると、どちらの方向にも外れます。大事なのは当てることではなく、外れたときに自分の判断を説明できるかだと考えています。

投資は自分の頭で考え、自分のリスク許容度に合った判断をすることが何より大切です。今回の記事がその一助になれば幸いです。


【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断はご自身の責任でお願いします。株式投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。

それでは。

コメント

タイトルとURLをコピーしました